相談内容
「この頭痛ってもしかして歯のせいだったりします?」
そう僕に質問をされたのはいつも慢性的な体の疲れを取りに来る常連の患者さんでした。
いつもは月に1~2回程度の定期的なケアに来られるだけだったのですが、このところ首肩の緊張とそれに伴う頭痛に悩みいつもよりペースを詰めて施術をされていました。
しかし「いつもより治りが良くならないな」と思い、他に何か心当たりはありませんかと尋ねたところ
「そういえば半年前くらいから奥歯の治療をしていて、その頃から凝りが悪化した気がする」とお話してくれました。
聞けば奥歯の状態が悪く、痛みによるストレスも毎日強かったとのことでした。
後日、歯の治療の終わりと共に首や肩の凝りと頭痛も治まったそうです。
今回はその時にお話しした歯の痛みと頭痛などの関連性について少しお話したいと思います。
目次
歯の痛みと頭痛の関連性
「頭痛のせいで歯が痛い」または「歯の痛みのせいで頭痛がする」
鶏が先か卵が先か・・・といったやや哲学的な話とは違いこれにはきちんと理由があります(笑)
特に偏頭痛といった神経性の頭痛の際にこの歯の痛みも現れやすいのですが、その理由は単純に「神経が頭と歯で繋がっているから」なのです。
ではこの画像を見て下さい。
その神経は”三叉神経”と言い、側頭部の方から顔の方に広く分布する構造をしています。
その為、痛みなどの原因が神経に影響すると他の分布している神経にまで痛みが波及します。
よって歯の痛みから来る頭痛もあれば、頭痛から来る歯の痛みもあります。
そして特に”歯痛”は人が感じる痛みの中でも薬などがなければ軽減が難しい慢性的なストレスです。
こういった痛みのストレスにより首や肩は無意識に緊張してしまうので、筋肉の凝りが悪化してしまうケースがあります。
楽な姿勢を取ったり夜安静にして眠っていてもズキズキと痛み続ける症状があった場合は内臓痛や神経痛などの疑いもあるので、もし似たような症状があった場合は注意してみるのをオススメします。
歯ぎしりで肩凝りになる?
「寝てる時に歯ぎしりしてしまっているみたいで、朝起きたら肩に力が入っているのが自分でも分かるんですよね。こういうのも肩凝りの理由になるんですか?」
と、聞かれる事が臨床上わりと多かったりします。
聞けば人口の10~20%くらいの人は歯ぎしりをしてしまっているそうですよ。(歯科医曰く)
なぜ歯ぎしりをしてしまうかの原因は未だ明確に分かってはいませんが、研究が進みどうやら歯ぎしりは「眠りの浅い時」に起こるという事が分かっているみたいです。
実は子供の方が大人に比べて歯ぎしている率が高いとされているのですが、それはまだ子供の睡眠構造が未熟だからなんだとか。
大人はそれに比べ、「睡眠が浅くなる」理由がいくつかあります。
それは「飲酒」であったり、「喫煙」であったり。「睡眠時無呼吸症候群」や「逆流性食道炎」といった疾患の方たちも睡眠の質が悪くなるので、眠りが浅くなってしまい歯ぎしりをしてしまうんだそうな。
また睡眠中の歯ぎしりの際に出る力は日中に意識して思い切り噛みしめたときに出る力よりも大きい場合があるそうです。
ギリギリと5分間も歯をすり合わせる人や、一晩で計何十分も歯を食いしばっている人もいるみたいで、それだけ力が入っていれば朝起きて肩凝りがある事も不思議ではありませんね。
良く歯ぎしりで悩んでいる方に「良く眠れていますか?」と聞くと、「もう朝までグッスリ!」と返せる人は中々いません。
深い眠りの時、生理的に人の身体は筋肉の働きが抑制されるようになっています。
まずは熟睡出来るように生活を変えてみるのはいかがでしょうか?
まとめ
歯並びの悪さから上手く歯の噛み合わせが出来ずに慢性的に肩が凝ってしまったり、歯の治療中に首の痛みや頭痛が出てしまう事はままあることです。
問題はそれが本当に歯の影響によるものかどうかの判断が難しいことですよね。
例えばそれが普段は肩凝りなど気にしたことがなかったのに、歯の治療をしたら突然なった。となれば理由も見つけやすいですが、普段から慢性的な疲れを感じている方にとってはそれが仕事の疲れのせいなのかもしれませんし、もしかしたら全く別の理由かもしれませんのでその判別がつき辛いものです。
僕なんかはそれを判断するのによく「術後の経過」を良く観察します。
施術を行った後に自分で予測していたより痛みが取れていなかったり、症状に変化が見られなければ「もしかしたら内臓性の腰痛かな?」とか「もっと他に原因があるのかな?」と疑うようにしています。
余談ですが、東洋医学では腰痛の治療の為にその人の腰にある大きなほくろをお灸で取り除いたりする事があります。
これは腰にあるほくろが腰への血流などを妨げているという考えからきているのですが、実際にその治療をやった方から話を聞けばどうやらその後本当に腰痛が治ったようです。
なにが痛みの原因に成りうるか分からないものですね。難しいです(笑)
特定の精神的なストレスが痛みの原因である事も考えられていますので、僕ら施術者は本当に広い視野を持って治療に臨まらなければならないなと感じた出来事でした。
一生勉強ですね・・・!!